文在寅政権の「前後不覚」に北朝鮮から笑えない指摘
そして、「しかし重要なのは、この機会が韓米同盟関係をさらに一段階アップグレードできるきっかけになることだ」と強調。また、「防衛費の増額と軍事衛星など戦略兵器の購入により、わが国の防衛力を積極的に高めていく」ことで、北朝鮮の監視強化につなげていく考えを明らかにした。
ハッキリ言って、取ってつけたような説明である。GSOMIA破棄の表明を受け、文在寅政権に対して異例の「名指し」批判を行った米国政府の激怒ぶりに慌てたものと見られる。
(参考記事:米国政府「文在寅」名指しして不満爆発…北は軍事挑発)
実際、この局面で米韓同盟の強化や軍備増強を強調することは、文在寅政権のこれまでの姿勢と矛盾して見える。
同政権が対話再開を切望する北朝鮮は最近、米韓合同軍事演習を繰り返し非難。昨年の南北首脳会談で結ばれた緊張緩和の約束に違反するとして、韓国との対話を拒絶する姿勢を鮮明にしている。
それでも、文在寅政権の活路は南北対話にしか見いだすことが出来ないのが現状だ。日本からの輸出規制措置を受け、文在寅氏が8月15日の演説で「南北の平和経済の実現で日本に追いつく」と宣言したのは記憶に新しい。ところがこれも、北朝鮮当局者から次のように言われて拒絶されてしまった。
「わが軍隊の主力を90日内に『壊滅』させ、大量殺りく兵器の除去と『住民生活の安定』などを骨子とする戦争シナリオを実戦に移すための合同軍事演習が猛烈に行われており、いわゆる反撃訓練なるものまで始まっている中で公然と北南間の『対話』をうんぬんする人物の思考は果たして健全なのか。まれに見る図々しい人だ」
つまり、米韓同盟と南北対話の「板挟み」に苦しんでいるのが文在寅政権の現状なのだ。この窮地から抜け出したければ、米韓同盟を洗練化させ、北朝鮮に少しずつ理解を求める道しかないだろう。
しかし文在寅政権は、日本との対立というもうひとつの難問を抱え込んでしまったことで、政策判断の均衡を失いつつあるようにも見える。北朝鮮からの「思考は健全なのか?」との意地の悪い問いかけも、素通りできないものになりつつある。
(参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感)