違反したら「残酷に処刑」も…北朝鮮で「飲み会」禁止令

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米朝対話が膠着状態に陥り、制裁は一向に解除される気配がない。当局は、締め付けの強化と精神論でこの難局を乗り切ろうとしているようだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月5日の各機関、企業所、協同農場に指示文が下された。その内容は次のようなものだ。

「集まって宴会を開いて不平不満を並びたてたり、流言蜚語を広げる現象について積極的に反対する闘争を繰り広げなければならない」

「酒の席では不満が飛び出すのが常なので、集まることそのものを減らし、体制への不満を言わないように労働者に注意せよ」

このような指示は、当局が度々出しているものだ。「小人閑居して不善を為す」と考え、集まって酒を酌み交わしていれば、体制への大批判大会になるのが目に見えているので、元から断とうというものだ。極端な例だが、見せしめとして非常に残酷な方法で軍幹部14人が処刑された例もある。

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当局は自分たちに都合の悪いうわさ話が急速に広まるたびに、箝口令を敷くなどして抑えつけてきた。ちなみに、噂話は刑法211条の虚偽風説捏造および流布罪で禁じられた違法行為で、1年以下の労働鍛錬刑に処すとされている。

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北朝鮮は日本などと比べ、極度に娯楽が少ない。ましてや田舎では、酒を飲むこと以外に憂さ晴らしの方法は皆無に等しい。そこで、当局はこんな提案をした。

「敬愛する最高指導者(金正恩党委員長)の名言学習をせよ」

一つ例を挙げよう。

「われわれの社会主義祖国は、金日成祖国であり、わが民族は金日成民族だ」

これは金正日総書記の「名言」だが、それぞれの名言には「名言解説」があり、そこに込められた意味が説明されている。以下は2011年の「わが民族同士」の名言解説だ。

「偉大なる領導者金正日将軍様のこの名言には、われわれの社会主義祖国とわが民族は偉大なる首領金日成主席のご尊名とのみ結び付けられ、呼ぶことのできる偉大なる首領様の国、偉大なる首領様の民族という深い思想が込められている」

名言は、国や民族といった大きなテーマだけではなく、非常に些細な問題に関するものもある。今回は、金正恩氏の軍需工業、文化芸術、石炭工業などについての指示を学習するよう求められている。

子どものころからこの手の思想教育を強制されてきた北朝鮮の人々は、表では従順に従うふりをしつつも、裏では適当に聞き流すことでやり過ごすという「生活の知恵」を身に着けている。今更、「名言の学習をせよ」と言われたところで、真剣に取り組む人はそう多くはなく、お上の目を盗んでちびちびと一杯やっていることだろう。

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思想の引き締めを図り、国際社会の制裁にも揺るがない体制づくりを、というのが目的なのだろうが、匿名を要求した北朝鮮の党機関出身の脱北者は次のように語った。

「社会的雰囲気を統制するこのような指示は頻繁に下される一般的なものではない。1980年代に経済が苦しくなりはじめたころ、1990年の苦難の行軍のころ、そして2009年の貨幣改革のころなど経済的に苦しかったときに、不平不満を自粛させるための指示文が下されたことがある」

彼は、今回のような指示が下された背景について、「現在の経済難による住民の不満が大きいことを、金正恩政権が認識している証拠だ」としているが、政権としても、「自力更生」を訴える以外にこれと言った経済対策がないとも指摘している。