自国経済の現場を破壊する北朝鮮版「紅衛兵」たち

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北朝鮮の金正恩党委員長の亡父・金正日氏は朝鮮労働党書紀だった1970年代前半、「3大革命赤旗獲得運動」なるものを提唱した。思想、技術、文化の「3大革命運動」を浸透させるために、大学卒業を控えた学生と金日成高級党学校の学生、大学を卒業したばかりの技術者や事務員などの若者が、「3大革命小組」として全土の機関、企業所、協同農場などに数人から数十人単位で送り込まれた。彼らは北朝鮮版の紅衛兵とも呼ばれた。

彼らは党の決めた政策に反する活動を摘発し、国のすべての組織を朝鮮労働党の指導の下に組み込んでいったが、現実に合わないやり方を現場に強いたり、技術者を責め立てて現場から追放、虚偽報告やワイロが蔓延るなどの著しい弊害を生んだことで、徐々に下火になっていった。

ところが、金正恩氏が政権の座についてから、再び同様の運動が行われるようになり、現場との軋轢を生んでいると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、昨年、朝鮮労働党から3大革命小組員らが清津(チョンジン)の金策(キムチェク)製鉄連合企業所に送り込まれた。技術革新運動を繰り広げるのが目的だ。その結果として、鋼鉄生産の心臓部とも言うべき新しい酸素分離機と溶鉱炉が完成した。

情報筋は詳細に触れていないが、完成したのはおそらく「チュチェ(主体)鉄生産システムの完成において重要な意義を持つ酸素熱法溶鉱炉の統合オートメ化システムと真空精錬炉コンピュータ制御システムの開発」というものだろう。

チュチェ鉄とは、燃料(コークス)が少なくても生産できる鉄鋼だが、技術的には失敗したと言われているが、自力更生の象徴として持ち上げられ、研究者は様々な賞を受賞している。

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現場に派遣された3大革命小組員らは、この技術を技術革新の成果として上部に報告した。ところが、完成から1年も経たずに酸素分離機と溶鉱炉の内壁に問題が生じ、生産が止まってしまったのだ。

詳細は不明だが、小組員らが「企業所の経営を党の原則に基づいて指導する」として、現場の技術者の意見を無視して推し進めたことが原因のようだ。

補修工事を進めるにあたって、現場の幹部は、その場しのぎではなく、耐火れんがを国から供給してもらい、溶鉱炉を元通りにしなければ、鉄鋼生産を続けられないと現実に即した提案をした。ところが、小組員らは「敗北主義に浸っている」として、中央党(朝鮮労働党中央委員会)の3大革命小組事業部に報告し、提案した幹部らが批判を浴びるはめになっている。

国に耐火れんがの供給を求めれば、炉に問題が生じたことがバレてしまい、小組員らが責任を取らされかねない。また、そんな技術指導を行った小組員らのメンツも潰れる。そういう理由で、現実的な提案をした幹部が批判されるように仕向けたもようだ。

製鉄所の各部署に派遣された小組員らは「党から派遣された前衛闘士」だと名分を掲げ、生産活動に大して様々な指摘を行うが、それに意見する幹部や現場の労働者は監視対象に分類し、党の指導に歯向かっているという資料を集めた上で上部に報告する。そのせいで更迭される幹部も現れており、幹部らは3大革命小組のことを「特殊保衛部(秘密警察)」だと非難している。

デイリーNKは昨年、この製鉄所からある技術者が追放されたと報じたが、彼も3大革命小組の犠牲になったのかもしれない。

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋によると、1970年代の3大革命赤旗獲得運動の当時に、数多くの現場の幹部や労働者が更迭されたことから、各現場は3大革命小組に対して極度の不信感を持っている。

「3大革命小組員らは、新世紀の産業革命の斥候兵として工場、企業所の技術革新運動を党の思想のとおりに指導せよという任務を受け、工場、企業所の実務に干渉しており、工場の幹部の間では『工場をまともに運営するにはまず3大革命小組からなくすべき』との声が上がっている」(情報筋)

各工場、企業所、協同農場の労働党書紀は、それぞれを指導監督する立場にあるが、組織の弱体化によりかつてのような威光を失っている。それを取り戻す一環として、3大革命赤旗獲得運動のリバイバルが行われているわけだが、現場の技術や経験を無視して、技術的裏付けのない要求を押し付け、それに歯向かえばクビにするというやり方では、党の統制力の強化には成功したとしても、生産力のアップには繋がらないだろう。

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