金正恩激怒「温泉支配人」を公開処刑から救った救世主

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は昨年7月17日、金正恩党委員長が咸鏡北道(ハムギョンブクト)の温堡(オンポ)休養所を現地指導したと伝えた。休養所とは、北朝鮮全土に100ヶ所ほど存在する労働者が利用する総合レジャー施設だが、その状態を見た金正恩氏は次のように指摘した。

最高指導者は、休養所の風呂場を見て回りながら、管理をよくしていないので温泉治療の浴槽が汚く、薄暗くて非衛生的だ、このような環境で治療になるのか、本当に汚いと指摘した。

金日成主席と金正日総書記の指導の業績が宿っている事績建物という看板を掛けてこのようにずさんに管理、運営して人民の好評ではなく批評を受けるようになれば、四季にわたって温泉水が干上がることなく湧き出る景色のよい所に人民のための休養所から建設するようにした主席と総書記の業績を台無しにし、罪を犯すことになると厳しく言い聞かせた。

金正恩氏は3年前、スッポン養殖場をした際に「管理がなっていない」と幹部を激しく叱責したことがある。支配人は銃殺されたが、この休養所の担当者も生きた心地がしなかったことだろう。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

ところが、最近に休養所の担当者は胸をなでおろしていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

この休養所からほど近いところに、北朝鮮が誇る名勝地、七宝山(チルボサン)がそびえ立つ。昨今、急増する中国人観光客も多く訪れているのだが、もはやキャパシティを超えているようだ。

(参考記事:急増する外国人観光客に「キャパ限界」…北朝鮮が受け入れ制限

宿泊施設が不足したため、七宝山観光総局は、北朝鮮国民しか受け入れていなかったこの休養所を外国人観光客にも開放することにした。このような休養所はどこも施設や食事が貧弱極まりないのだが、当局は物資を優先的に供給するようになり、食事のレベルが向上したという。情報筋の言及はないものの、施設面でも何らかの向上があったものと思われる。

休養所の管理者は、突然降って湧いた状況にとても喜んでいるという。施設を改善しようにも予算を自力更生(自己調達)することを求められるのが北朝鮮の常だが、中国人観光客が押し寄せてきたことで、状況が改善し、クビがつながったというわけだ。

金正日総書記は生前に「この世で全知全能の存在があるとするならば、それは人民大衆だ」「人民が望むならば岩の上にも花を咲かせなければならない」などと説いているが、北朝鮮の一般国民が、外国人より冷遇されていることは、この休養所への供給を見るとよくわかる。

一般国民より厚遇されているのは、外国人だけではない。幹部も同じだ。

別の情報筋が伝えたのは、両江道(リャンガンド)の金正淑(キムジョンスク)郡にある施設の実態だ。

金日成主席の夫人の名前が付けられたこの地域は、金正淑氏が抗日パルチザン活動を行っていた当時にアジトや軍事物資の倉庫と使用していたと言われる建物が残されており、それらは新坡(シンパ)革命事跡地として指定されている。

金日成氏、金正淑氏の抗日パルチザン活動の足跡をめぐる聖地巡礼のことを「踏事」(タプサ)と言うが、金正淑郡にも踏事にやってきた人々を収容する宿泊施設が存在する。

そのうちの一つが、人民保安省(警察庁)の踏事宿営所だ。缶詰に入った食用油、魚などを他の奉仕機関より優先的に中央から配給を受けている。一方で、革命史跡を徒歩で周る大学生や一般労働者が泊まる宿営所には物資の供給がまともに行われていない。両江道にはすでに初冬だが、薪すらない場合もあり、暖を取ることすらままならない。

不足した食料品は、地元の機関が優先的に供給せよとの指示が下されている。

「力のある機関が利用する施設は、どこでも優遇される。幹部が主に利用する施設に供給される味噌ですら、材料や保管がきちんとなされている質の良いものだ」

しかし、一般国民の宿泊施設は、副業地(自営の畑)で育てた野菜をおかずにして出すしかない有様だ。

一方で金正恩氏は、南北交流の一環として韓国側が建設した金剛山(クムガンサン)の施設を「見ただけでも気分が悪くなる、ごたごたした」などとこき下ろした上で、再建設を命じている。

(参考記事:「見ただけで気分が悪くなる」金正恩氏、金剛山の韓国施設を罵倒

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