【対北情報戦の内幕-6-】総連捜査の深層…警察はなぜ公安調査庁に負けたのか

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「うちも公調も総連情報の入手手段は同じです。総連内部に協力者を獲得し、そこから内部情報を引き出す。つまり、協力者として獲得した活動家の地位が高いほど、秘匿度の高い情報が取れる。ここで、警察は旧来のやり方にこだわり、公調に遅れを取っているんです」

警察がこだわる旧来のやり方とは、一体どのようなものなのか。その実態は、すでに発表された様々な書籍、雑誌記事の類で明らかにされている。要約すると、概ね次の通りになる。

警察が実施する協力者獲得工作は、警察庁警備局警備企画課の「裏の理事官」が率いる「ゼロ」と呼ばれる組織が統括する。かつては「サクラ」「チヨダ」「カスミ」とも呼ばれていた組織で、公安警察の中枢をなす。以前は共産党だけの工作を担当していたが、ある時期から外事を含むすべての協力者獲得工作を統括するようになった――。

気が狂いそうになる“矛盾”

問題は、「ゼロ」が示す工作マニュアルの旧態依然とした内容にある。それは戦前の特高警察から引き継いだ対共産党向けのもので、工作対象者に目を付けてから接触するまで、基礎調査を短くても1年以上は行わなければならない。この間、「作業班」と呼ばれるチームが対象者を毎日尾行し、借金や異性閨係、馴染みの飲み屋から趣味嗜好まで、その人間を丸裸にする。そして、接触に当たっても偶然を装わねばならず、その後も数カ月もかけて人間関係を作り上げ、初めて自らの目的を明かす――。