【対北情報戦の内幕-6-】総連捜査の深層…警察はなぜ公安調査庁に負けたのか

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「確かに、地下に潜った思想の堅固な共産党員や極左活動家を協力者として獲得する上では、これが王道だったのでしよう。でも、ほとんどの朝鮮総連の人間というのはよっぽど“げんきん”なんですよ。彼らを相手にこんな悠長なことをしていたら、工作対象者の方が先に総連を辞めちゃうんです。外事警察が、工作に着手しては失敗しているのを尻目に、公調は既存の協力者に朝鮮学校の同級生を紹介させたりして、協力者をどんどん拡大している。特高時代からの力ビの生えた方法『協力者を作れ』『総連中央の情報を抜いてこい』と言われても、土台無理な話なんです」(前出・外事OB)

慢性的な財政難の中にある朝鮮総連はいま、「新世代の育成」を掲げ、20代から30代の若手活動家のつなぎ止めに必死になっているという。それにも関わらず、ただでさえ短期間に「実績」を上げるべき宿命を負わされた外事警察の現場は、“息の長い”獲得工作まで強いられている――この気が狂いそうになるほどの矛盾の中、現場が仕事を投げ出さないのはむしろ立派だろう。

防諜組織が秘密主義を取るのは当然だとしても、柔軟性を欠くうちにチャンスを失い続けていれば、いずれ組織の存在意義すら問われることになりかねない。

そして実際に、外事警察の株を奪い、その存在を脅かしかねない新たな秘密組織が、すでに警察内部には存在しているのである。(つづく)

(取材・文/ジャ一ナリスト 三城隆)

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