北朝鮮では、日本の植民地統治時代や、朝鮮戦争後に旧ソ連などの援助で建設された工場、発電所、ダムなどが大した補修もされないまま未だに使われている。 その最たる分野の一つが「鉄道」なのだが、平壌と東海岸の羅先(ラソン)を結ぶ平羅(ピョンラ)線では、老朽化に起因する大事故が過去に2件も起きている。 血で染まった川 事故が起きたのは1989年の夏のことだった。平壌から北朝鮮東海岸の最北端にある穏城(オンソン)に向かっていた列車は、秋夕(チュソク、旧盆)で帰省する人で超満員、屋根の上に ...

外部情報の流入で変化を促す デイリーNKと韓国の対北朝鮮ラジオ「国民統一放送」は、今月10日に非公開で訪韓したトム・マリノフスキー米国務次官補(民主主義・人権・労働担当)との単独インタビューを行った。 同次官補は、北朝鮮において政治犯収容所の運営に関わったり、罪のない人々の処刑に関わったりしている人権侵害の責任者たちを「米国が必ずつきとめる」と明言。また、北朝鮮への外部情報の流入を促すことが朝鮮半島での平和を実現する上で重要だと指摘した。なお、インタビューは17日、国民統一放 ...

「6カ国協議は死んだ」 北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射実験の「成功」が関係各国の衝撃を呼ぶ中、それを待ち構えていたかのように、北朝鮮の外交エリートが北京で開かれている国際会議でこう言い放った。 発言の主は、北朝鮮外務省のチェ・ソンヒ米州局副局長。北朝鮮の核問題を巡る6か国協議参加国による「北東アジア協力対話(NEACD)」で22日、対話への望みにトドメを刺すかのように冷たく言ったのだ。 人妻を強奪 チェ氏は2003年8月に6カ国協議が始まった当初から、外務省の「核タスクフォー ...

21日付の産経新聞(電子版)によれば、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が最近、「金正恩元帥様に無限の栄光を抱かせるため、朝鮮総連の反対勢力に総攻撃・総決死戦を繰り広げ勝利を勝ち取ろう」との方針を傘下団体に示しているという。 ノンポリ化で公安も当惑 5月上旬の朝鮮労働党第7回大会に代表を送ったのを機に、朝鮮総連が何らかの新たな活動を始めたようだというのは、筆者もすでに指摘していることだ。 ただ、朝鮮総連について何の予備知識もない大多数の日本人が産経の記事を読んだらどう感じるか、 ...

北朝鮮では、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士による窃盗、強盗などの犯罪が後を絶たない。 両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、道内の豊山(プンサン)郡で今月初め、第12軍団隷下の43旅団に所属する兵士3人が民家に押し入り、凶器を振り回して金目の物を盗もうとした。 ちょうど通りかかった糾察隊が異常に気づき、保安署(警察署)に通報した。出動した保安員(警察官)に1人は逮捕され、2人は逃走した。 この糾察隊、上からの指示で作られたものではなく、住民がボランティアで行っている。食う ...

北朝鮮が、米国による先制攻撃を恐れている。朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省の報道官は15日、米国で自国への「精密空襲作戦」が公然と論じられているとして警戒感を露わにした。 斬首作戦に同調 「精密空襲作戦」とは、米国の民間情報会社が5月末に配信したレポートのこと。有事の際、米軍は十数機のB-2ステルス爆撃機と24機のF-22ステルス戦闘機を中心とする戦力で、北朝鮮の核関連施設とミサイル発射施設を叩くとする内容だ。 それにしても、これがCIAや国防総省から出たものならいざ知らず ...

北朝鮮から海外に逃れた脱北者で、唯一のオープンリーゲイ(カミングアウトした性的少数者)である小説家チャン・ヨンジンさん。彼は昨年4月に自叙伝小説「赤いネクタイ」を出したが、このたびその英語版が出版されることになった。 そもそも「同性愛」「性的指向」などの概念すら理解されていない北朝鮮という社会で、彼はどのように暮らしていたのだろうか。 「妻」に触れることもできず ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、自分の生い立ちについて次のように語っている。 チャン・ヨンジンさんが生ま ...

東京地裁は5月31日、覚せい剤取締法違反に問われた元プロ野球選手の清原和博被告に対し、懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。 報道によれば、清原氏はこれを受けて「(将来的には)心も体も万全な態勢にして、野球に向き合いたい」と、涙を流しながら語ったという。 再犯の懸念 この言葉が、現実のものになることを切に望む。しかし巷では、早くも清原氏の今後を心配する声も上がっているようだ。 理由のひとつは、覚せい剤使用者の再犯率が高いにも関わらず、保護観察が命ぜられなかったこと ...

金正恩党委員長をはじめ、北朝鮮当局は、中朝国境で中国キャリアの携帯電話を通じて様々な情報が流入出されていることに警戒している。最近では、「コミュニケーションアプリ」に対しても警戒を強め、厳しく取り締まるよう指示を下したという。 デイリーNKの両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、「つい最近、『カカオトーク、LINEを使用している住民を見つけ出し、反逆者として逮捕せよ』という指示が降りてきた」という。 中国のアプリも 摘発された場合、現場の保衛員(秘密警察)や保安員(警察 ...

北朝鮮の朝鮮中央テレビは1日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など、昨年から今年前半にかけて試射の行われた新兵器類の特集映像を公開した。 対戦車ミサイルや弾道弾も この日は中国の習近平国家主席と、訪中した金正恩党委員長の側近・李洙墉(リ・スヨン)党副委員長の会談が行われていた。会談に合わせて映像を公開することで、核・ミサイル開発の続行を強調したものと見られる。 特集映像は、『革命の最全盛期を開かれて』と題された、金正恩氏の現地指導の様子などをまとめたドキュメンタリーの一部。 ...

5月31日の月曜日の午前、東京・麻布十番の一角が一時、騒然とした空気に包まれた。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の若手メンバー約70人が集結。駐日韓国大使館に対し、抗議行動を試みたのだ。彼らが掲げた横断幕には、次のように書かれていた。 「共和国公民たちを集団誘因拉致した朴槿恵逆徒一味の特大型国際テロ行為を峻烈に断罪糾弾する!」 金正恩氏が直接指示か 何のことかと言えば、4月に中国で発生した北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北は韓国当局による「拉致」であるとして、憤って見せている ...

北朝鮮当局が、自国在住の華僑に対して締め付けを強化していると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。 RFAの華僑の情報筋によると、締め付けは今年1月に北朝鮮が行った第4次核実験以後から、強化されはじめた。北朝鮮当局は、華僑に対する通行証の発行を制限しており、北朝鮮から出国できない人が続出している。 中国国籍を持つ在朝華僑のパスポートは平壌の中国大使館が発行する。しかし、居住地の国家安全保衛部(秘密警察)外事課で通行証を発行してもらわなければ、出国できないシステム ...

北朝鮮の姜錫柱(カン・ソクジュ)前党書記が20日、病死した。かつての金正日総書記の最側近の1人であり、北朝鮮外交の立役者でもあった。その実像を、1990年代に脱北した元北朝鮮官僚が語る。 金正日の側近の中でも、姜錫柱(カン・ソクジュ)は実力一本でのし上がった男だったと言える。 姜錫柱は1939年、平安南道の平原で4人兄弟の次男として生まれた。平壌外国語大学を卒業後、さらに平壌国際関係大学で学び、北京外国語大学の英語科に留学。1960年代、まず党国際事業部でキャリアをスタートさ ...

先月、中国浙江省で発生した「北朝鮮レストラン従業員集団脱北事件」の報復として、北朝鮮は相当規模の「拉致組」を中国に派遣した模様だ。 北朝鮮の内部事情に精通した情報筋はデイリーNKに対し、北朝鮮の金正恩党委員長が、「(脱北し韓国に亡命した)13人の従業員らの数倍の韓国人を拉致せよ」との指示を下したようだ、と語った。 情報筋によると、「拉致組」は北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察)で「不満分子」の内偵などを行う反探要員や、軍の偵察総局の要員から成り、その数は300人以上と史上最大規 ...

北朝鮮の歴史に、「8月宗派事件」として知られる出来事がある。事件は、今から50年前の1956年8月30日から31日にかけて行われた朝鮮労働党中央委員会全員会議で幕を開けた。 この席上、抗日パルチザン出身勢力を率いて独裁権力を手中にしつつあった金日成氏――金正恩党委員長の祖父――は、ライバルである延安(中国)派とソ連派の党幹部たちから深刻な政治的挑戦を受けた。彼らは金日成個人崇拝や、重工業偏重の政策が国民の生活を苦しめている点について鋭く批判したのだ。 最終的に、ライバルたちは ...

北朝鮮ではヤクザのことを「チュモクセゲ」、直訳すると「拳の世界」という。非常にわかりやすいネーミングだ。 前回の主人公、ソク・ギョンチョルのイメージにもピタリとはまる。彼が率いたグループは、愚連隊から出発し、200人規模のヤクザ組織に発展していったケースだった。 その一方、国家機関と「紳士協定」を結び――すなわち癒着しながら利権をシノギにするヤクザ組織も存在していた。 1995年に文藝春秋から発刊された『北朝鮮不良日記』(白栄吉著、李英和訳)には、知られざる北朝鮮ヤクザ事情が ...