報復殺人と「秘密の饗宴」、そして愛人…北朝鮮外交エリートの実像
北朝鮮の姜錫柱(カン・ソクジュ)前党書記が20日、病死した。かつての金正日総書記の最側近の1人であり、北朝鮮外交の立役者でもあった。その実像を、1990年代に脱北した元北朝鮮官僚が語る。 金正日の側近の中でも、姜錫柱(カン・ソクジュ)は実力一本でのし上がった男だったと言える。 姜錫柱は1939年、平安南道の平原で4人兄弟の次男として生まれた。平壌外国語大学を卒業後、さらに平壌国際関係大学で学び、北京外国語大学の英語科に留学。1960年代、まず党国際事業部でキャリアをスタートさ ...
金正恩氏「数十人の韓国人を拉致せよ」指示…工作員300人、中国に派遣
先月、中国浙江省で発生した「北朝鮮レストラン従業員集団脱北事件」の報復として、北朝鮮は相当規模の「拉致組」を中国に派遣した模様だ。 北朝鮮の内部事情に精通した情報筋はデイリーNKに対し、北朝鮮の金正恩党委員長が、「(脱北し韓国に亡命した)13人の従業員らの数倍の韓国人を拉致せよ」との指示を下したようだ、と語った。 情報筋によると、「拉致組」は北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察)で「不満分子」の内偵などを行う反探要員や、軍の偵察総局の要員から成り、その数は300人以上と史上最大規 ...
金正恩氏が党大会に隠していた「血と恐怖」のシナリオ
北朝鮮の歴史に、「8月宗派事件」として知られる出来事がある。事件は、今から50年前の1956年8月30日から31日にかけて行われた朝鮮労働党中央委員会全員会議で幕を開けた。 この席上、抗日パルチザン出身勢力を率いて独裁権力を手中にしつつあった金日成氏――金正恩党委員長の祖父――は、ライバルである延安(中国)派とソ連派の党幹部たちから深刻な政治的挑戦を受けた。彼らは金日成個人崇拝や、重工業偏重の政策が国民の生活を苦しめている点について鋭く批判したのだ。 最終的に、ライバルたちは ...
【実録 北朝鮮ヤクザの世界(下)】社会主義国で「経済ヤクザ」が誕生するまで
北朝鮮ではヤクザのことを「チュモクセゲ」、直訳すると「拳の世界」という。非常にわかりやすいネーミングだ。 前回の主人公、ソク・ギョンチョルのイメージにもピタリとはまる。彼が率いたグループは、愚連隊から出発し、200人規模のヤクザ組織に発展していったケースだった。 その一方、国家機関と「紳士協定」を結び――すなわち癒着しながら利権をシノギにするヤクザ組織も存在していた。 1995年に文藝春秋から発刊された『北朝鮮不良日記』(白栄吉著、李英和訳)には、知られざる北朝鮮ヤクザ事情が ...
【実録 北朝鮮ヤクザの世界】28歳で頂点に立った伝説の男
「北朝鮮にも腕っぷしが強くて徒党を組む愚連隊のような連中をはじめ、裏社会の人間はいる。実際、俺自身が裏社会の人を通じて北朝鮮を脱出できたわけだからね。ただ、日本のヤクザみたいに巨大で組織的じゃないね」 そう語るのは60代半ばの脱北者、崔勇男(チェ・ヨンナム)さん。1970年代に大阪から北朝鮮へ帰国した崔さんは、かの国の現実に絶望し、2008年に脱出。命がけの逃避行の末に、生まれ故郷の日本に生還した。 「北朝鮮のヤクザ」と言われても、にわかにイメージしづらい。なぜなら、北朝鮮に ...
北朝鮮で放火テロ、国民の怒りが爆発か
36年ぶりに朝鮮労働党第7回大会が開かれた北朝鮮から、衝撃的なニュースが飛び込んできた。党大会の期間中に、地方の「人民委員会(日本の役所に相当)」に対する放火事件が発生したというのだ。首都・平壌に世界中から100人を超す記者を呼び寄せ、盤石の統治をアピールしたい国家の目論見とは裏腹に、地方では住民の怒りが極限にまで高まっている現実を示す例と言える。 暗殺計画説も 北朝鮮の内部情報筋が伝えてきたところによると、放火事件が起きたのは北朝鮮の北端近くに位置するとある郡(情報源の安全 ...
北朝鮮「虐殺収容所」を米軍が解放する日
米国務省で北朝鮮の人権問題を担当するキング特使は2日、米ワシントンDCの戦略国際問題研究所(CSIS)で開催された討論会で発言し「人権問題と関連して北朝鮮当局者を制裁対象とする方向で検討を行っている」と明らかにした。 一方、朝日新聞は先月28日付で、米国政府は政治犯収容所の運営に関与している国家安全保衛部(以下:保衛部)と人民保安部の幹部など10人前後を、早ければ今月中に制裁対象として指定する見通しだと報じている。 歓迎すべき動きである。しかし、保衛部が管理する政治犯収容所の ...
米元高官「北朝鮮でクーデターの可能性」の現実味
米国のウェンディ・シャーマン元国務次官は3日、米ワシントンDCで行われた朝鮮半島関連セミナーの昼食会で発言し、「北朝鮮で内部崩壊またはクーデターが起こる可能性を想定するのは不可欠であり、韓国と米国、中国、日本が速やかに協議を行うべきだ」と述べた。 「同窓会」を血の粛清 オバマ政権でイランとの核交渉を担当した同次官は、現在はヒラリー・クリントン前国務長官の外交ブレーンを務めており、クリントン氏が大統領選で勝利した場合、外交・安保を統括する要職に起用されると見られる。 では、彼女 ...
脱北支援者「惨殺事件」が発生…北朝鮮国境に謀略渦巻く
韓国外務省は2日、中朝国境地帯で取材する韓国のメディア関係者らに、北朝鮮による拉致やテロ行為の可能性が高まっているとして注意を呼びかけた。同様の呼びかけは、3月末と4月半ばにも行われた。 中国にある北朝鮮レストランの従業員が集団脱北して韓国入りした事件を巡り、北朝鮮が「韓国による拉致だ」と主張していることや、中国が国連の対北制裁に加わったことなどを受け、北朝鮮が韓国国民を狙った拉致やテロ行為を起こす懸念が増していたためだ。 エロビデオ投入作戦 そんな中、先月30日には北朝鮮と ...
「食堂の責任者が国情院チーム長にペコペコ」脱北ウェイトレスの同僚らが証言
北朝鮮で3日、先月7日に明らかになった「北朝鮮レストラン従業員13人集団脱北事件」をめぐり、脱北した従業員の元同僚や残された家族による合同記者会見が開かれた。朝鮮中央通信が伝えた。 会見では、中国の現場に居合わせた元同僚らが「今回の事件は徹頭徹尾、南朝鮮のかいらい一味がち密に計画し、強行した組織的な誘引・拉致行為である」と非難した。 また、「食堂の責任者がバスに乗ってきた連中の一人に近寄って『国情院チーム長』(延吉で食堂を運営する時から責任者と謀議をこらしていた者)と呼びなが ...
北朝鮮、金正恩氏が唱える「速度戦」で建設現場は事故続発
北朝鮮の両江道(リャンガンド)白岩郡(ペガムグン)地域に建設中の「白頭山先軍青年発電所」建設現場で、無理な工期から死亡事故が続発しているとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。 「発電所の建設現場で、落石や石山の発破(爆破)作業中の事故が続出し、何人かの突撃隊員(動員された建設部隊)が死亡した」(内部情報筋) 北朝鮮の建設現場では、もともと安全環境が整っていない。それに加えて伝統的なスローガン「速度戦」を唱えることから、突貫工事になりがちで、頻繁に事故が起きるという悪循環に陥 ...
「金正日の料理人」に敗北した朝鮮総連
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1日、「夫永旭(プ・ヨンウク)総連大阪府本部委員長を団長とする、朝鮮労働党第7回大会慶祝・在日本朝鮮人祝賀団が4月30日、平壌に到着した」と、一行6人の写真を添えて報じた。 祝賀団は夫氏のほか、愛知・神奈川・兵庫の各県本部の幹部らと、中央本部の中堅幹部らで構成されている。その中には朝鮮総連のトップ、許宗萬(ホ・ジョンマン)議長の長男である許明道(ホ・ミョンド)組織局副局長も含まれている。 「私を批判せよ」と極秘指令 日本政府は、北朝鮮の核実 ...
中朝国境で脱北者支援の牧師が殺される…北朝鮮の仕業との見方も
韓国の複数メディアは1日、中朝国境地帯で長年にわたり脱北者を支援してきた中国人牧師が殺害されたと一斉に報じた。北朝鮮当局が関与した疑いが強くもたれ、韓国で大きな注目を集めている。 殺害されたのは、吉林省長白県に住む中国朝鮮族のハン・チュンリョル牧師(49)。1993年から20年以上にわたり、鴨緑江をはさみ北朝鮮と向き合う同地の「長白教会」を率いてきた人物だ。 首を切り裂かれ 韓国紙の報道をまとめると、ハン牧師は4月30日午後2時頃、長白県内の知人に会いに出かけた後に連絡が途絶 ...
北朝鮮でも「クーデター未遂」が起きていた
韓国では、4月19日は歴史的に意義深い日だ。1960年3月に実施された大統領選挙での不正に反発した学生や市民が、一斉に蜂起。大規模なデモを展開して当時の李承晩(イ・スンマン)大統領を退陣に追い込んだのだ。その過程で、犠牲者も大勢出た。この出来事は「4・19民主革命」と呼ばれ、ソウル市江北区には国立の墓地があり、朴槿恵大統領も何度か参拝している。 「暗殺計画」の可能性 韓国ではその後も、大規模な民主化要求デモが繰り返し起きており、そこでも多数の犠牲者が出ている。 北朝鮮は、こと ...
金正恩氏は「挑発」でミサイルを撃っている訳ではない
韓国国防省によると、北朝鮮が15日午前5時半ごろ、東海岸で弾道ミサイルを発射。中距離弾道ミサイルのムスダンと推定されているが、発射直後にレーダーから消えたことや正常な軌道ではなかったことから、失敗したものと見られている。 とはいえ、北朝鮮が国連決議違反となる弾道ミサイルの発射を、国連安保理の制裁下で行ったのは、あくまで「我が道」を行くのだという強力なメッセージと言える。 ところで、今回の件も含め、各国政府やメディアは「挑発」という言葉をよく使う。辞書によれば、「挑発」とは「相 ...
「牛乳風呂」をたのしむ北朝鮮の上流階級
北朝鮮にいた頃、外貨稼ぎに携わる特別な地位にあったキム・ミョンチョルさんは、平壌市内中心部のマンションのワンフロアすべてを自宅として使っていた。家族連れで高麗ホテルを訪れ、1回の外食に1000ドルも使ったこともある。それでも「平壌では上流階級のうちには入らない」と語るキムさん。それもそのはず、ホンモノの上流階級はキムさん一家でも想像がつかないほど豪華な暮らしを送っているからだ。 平壌郊外の南浦(ナムポ)に名水の湧く泉があるんですが、毎朝大量の水を汲み上げて、200台もの給水車 ...