すでに本欄でも伝えたとおり、北朝鮮の貿易関係者の間からは、米朝首脳会談の失敗に対する落胆の声が漏れ伝わっている。その一方、北朝鮮国内には、会談の失敗に安どのため息をついている人々もいるようだ。その人々とは「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層の一部だ。 北朝鮮では、社会主義計画経済と配給制度がほとんど崩壊し、なし崩し的な資本主義化が進んでいる。その主人公が、市場での商売や運送業などで資本を蓄え、あるいは権力と癒着して甘い汁を吸い、今や不動産投資や工場経営にも進出しているトン ...

ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったことで、準備に関わった北朝鮮側関係者が「粛清」の憂き目に遭うのではないか、との懸念が一部で出ている。先日の本欄でも紹介したが、中国駐在のある北朝鮮貿易関係者は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し次のように語っている。 「拷問」の最高責任者 「最高尊厳(金正恩党委員長)が平壌に戻れば、会談についての総和(総括)をしなければならない。罪のない人が会談失敗のスケープゴートにされ、粛清される事態が起きるかもしれない」 北 ...

米バージニア大学生のオットー・ワームビアさん(当時22歳)が北朝鮮に長期拘束された後、昏睡状態で解放され、その直後に死亡した問題を巡りトランプ米大統領が非難を浴びている。 米朝対話の「危機」に トランプ氏はハノイでの米朝首脳会談でこの問題に言及。すると金正恩党委員長が「この件を非常によく知っているが、後になって知ったのだ」と語ったと明かし、「私はその言葉をそのまま受け入れる」と述べていた。これに、米国の世論が反発。さらにはワームビアさんの両親が非難の声を上げたのだ。 筆者はこ ...

全世界の注目を浴びつつベトナムのハノイで開催されるも、合意に至らないまま終了した2回目の米朝首脳会談。 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は1日付の記事で、「敬愛する最高指導者(金正恩党委員長)とトランプ大統領は、朝鮮半島の非核化と朝米関係の画期的発展のために今後も緊密に連携し、ハノイ首脳会談で論議された問題解決のための生産的な対話を引き続きつないでいくことにした」と報じ、具体的な結果には触れないまま「新しい対面を約束しながら別れのあいさつを交わした」と記事を締めくくることで、合意に至 ...

北朝鮮の金正恩党委員長とトランプ米大統領とは28日、ベトナムの首都ハノイで2日目の首脳会談を行ったが、非核化の道筋で合意に至ることなく、日程を繰り上げて終了した。 独裁国家と民主主義国家が、信頼関係を築くことの難しさを示した事例と言える。両首脳が友好関係を強調してはいるが、核以外でも人権問題などで火種は残り、しょせんは水と油なのだ。 (参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」) 軍隊が虐殺 しかしどうやら、金正恩氏はその重大さに気付いていない ...

ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が初日を迎えた27日、北朝鮮が日本に対し、過去清算を迫る非難をぶつけた。 北朝鮮のこのような主張は今に始まったものではなく、最近でもよく出されていたものだ。 (参考記事:「日本軍が慰安婦を虐殺した映像ある」北朝鮮メディア報道) しかし、米朝首脳会談のタイミングにストレートにぶつけてくるとは、今後の日朝関係を占う材料になりそうだ。 朝鮮労働党機関紙・労働新聞は同日、日本が国連安全保障理事会の常任理事国を目指すのは「せん越で無分別」であるとする論評 ...

100歳を迎えた北朝鮮の長寿老人に、同国のテレビ記者たちがほとほと困らされたというエピソードが聞こえてきた。 食糧難や経済の混乱が続く同国で、100歳まで長生きできる人は極めて珍しい。そのため、国営の朝鮮中央テレビは体制宣伝のための格好の素材と考えたようだが、老人はインタビューで「将軍様のご配慮のおかげで長生きできた」との言葉を最後まで口にしなかったという。北朝鮮でこのような態度は「不敬罪」に問われかねないものだが、老人はどうやら「ボケたふり」をして記者や当局を手玉に取ったよ ...

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は今月8日で創建71周年を迎えた。米国との非核化対話の流れを反映してか、軍事パレードなどは行われず、金正恩党委員長が人民武力省(日本の防衛省に相当)を訪問して演説するなど地味な行事だけで終わった。 ただ、はた目には地味に見えても、演説の中身はなかなか意味深なものだった。北朝鮮の軍は近年、物資の横流しや性的虐待が横行するなど、規律が乱れきっている。 (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長) そのような実情に対する金正恩氏の「悩み」が、 ...

かつて、北朝鮮で人気のある就職先と言えば、人民保安省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)などの司法機関、朝鮮労働党などの権力機関だった。一般庶民が飢えに苦しんでいても、特別配給を得られ、権限を利用してワイロを搾り取るなど、オイシい思いができたからだ。しかし、ここ数年で事情が変わった。 (参考記事:濡れ衣の女性に性暴行も…悪徳警察官「報復殺人」で70人死亡) 今、いちばん人気の就職先は合弁企業であると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。 咸鏡北道の情報筋によ ...

北朝鮮でUSBメモリが値上がりしているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮のある若者が「USBメモリの需要が非常に高く、カラの4GBのUSBメモリの値段は市場で26,000ウォン程度だ」と述べているという。北朝鮮の市場でのコメ1キロの価格がおおよそ5,000ウォン(約60円)だから、それなりに高級品といえる。さらに、コンテンツ入りのUSBメモリだとさらに価格が高くなるというが、一体どのようなコンテンツが入っているのだろうか。 「独自撮影」で銃殺 ...

北朝鮮の人々は、年がら年中、当局から組織生活や思想の総括、さらに奉仕活動に半強制的に動員されている。それは、子供たちとて例外ではない。 (参考記事:北朝鮮企業が少女たちの「やわらかい皮膚」に目をつけた理由) 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮の小学校から高校までの学生たちが「毛虫取り」をさせられているという。朝鮮労働党が、毛虫による森林被害を防止せよとの指示を出したからだ。冬休みの間も、10代の学生たちは酷寒のなかで毛虫取りに強制的に動員されているとい ...

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は4日、同国の朝鮮赤十字会中央委員会が「近年、遭難したわが船員たちが無事に帰国できるように数回にわたって人道的援助を提供した日本当局に当該のルートを通じて謝意を表した」と伝えた。 実の妹の「役割」 北朝鮮が、日本への謝意表明を国営メディアで明らかにするのは極めて異例だ。 北朝鮮メディアのこうした変化は金正恩政権ならではのものと言える。金正恩氏は、メディア戦略に相当に力を入れている。父親の金正日総書記は、自らの「神秘性」を守ることを重視していたのか、自国 ...

朝日新聞は3日、北朝鮮が今月末にも開かれる米朝首脳会談の場所として、米国が提案したベトナム中部のダナンで同意したと伝えた。北朝鮮と米国はかつて、ベトナム戦争で銃火を交えており、ベトナムでの首脳会談開催は歴史的に意味深なものを感じる。 北朝鮮はベトナム戦争に空軍パイロットを派兵し、世界最強の米軍と渡り合い、一定の戦果を挙げていた。 (参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」) その事実は長らく秘密にされていたが、国営朝鮮中央放送は2001年7月6日、空軍パイロット ...

北朝鮮「アブナイ男女の文化」(5) 本連載の1回目でも言及したが、北朝鮮の首都・平壌では現在、若い女性たちが「ダンナ作業」――つまりは金持ち男性のスポンサー探しに精を出しているという。 金正恩氏の「噂」 脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏の近著『平壌資本主義百科全書』によれば、平壌の高級レストランでは髪を金色に染め、ミニスカートにブランド物で着飾った若い女性が「ダンナ作業」を行っている姿が頻繁に見られるという。同著で証言している平壌の富裕層の男性によれば、彼女 ...

かつて、北朝鮮では権力に逆らうことは「死」を意味した。苦難の行軍の真っ最中だった1998年、飢える労働者を救うために不正を犯した製鉄所の幹部が死刑になった。怒りに震えた多くの労働者が抗議に立ち上がったが、国から返ってきたのは真摯な対応ではなく、文字どおりの戦車による「蹂躙」だった。 (参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」) ところが今では状況は大きく変化している。人々は「人権」という意識を持つようになり、以前ほど権力者を恐れなくなり、反抗することも ...

北朝鮮「アブナイ男女の文化」(1) 北朝鮮で昨年11月、軍の平壌高射砲司令部の政治委員が公開銃殺された件については、本欄でも伝えた。政治委員の罪状は朝鮮労働党に対する不服従に加え、「私生活の乱れ」というものだったという。 (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇) 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、政治委員の罪名のひとつである「私生活の乱れ」は、具体的には2人の愛人を囲って贅沢三昧をしていたということらしい。これに対しては ...